第31章 こっちを見ろ!!
周りを凍りつかせてしまうくらいの、天の冷笑。そんな 美しくも恐ろしい表情で、陸を呼び止めた。
これには、名を呼ばれた本人だけでなく 俺や楽をも固まらせた。
一体、天は何を口にするのだろう…。バクバクしている心臓を抑え、彼の言葉を待つ。
「陸。聴いたよ。IDOLiSH7の新曲」
俺と楽は、さらに体を硬直させた。
「ほんとっ!?」
「うん。“ JUMP!UP! ” だっけ。
IDOLiSH7らしくて、良い曲だったね」
「えへへ、天にぃにそう言って貰えたら凄く嬉しい!いつにも増して、練習 頑張ったんだよ!オレ達」
「そっか。いつにも増して頑張った、ね。
いつもよりも頑張らないといけない理由が、何か あった?」
「あ、うん。実はね、今回はレッスンの時間がいつもよりも短くて。1ヶ月で歌もダンスもマスターしなきゃいけなかったから!」
「1ヶ月…?ねぇそれって」
「はいはいストーップ」
天と陸の会話を、強引に断ち切ったのは大和。おそらく彼は、違和感に気付いたのだろう。
天の、何かを探るような質問や言動。何かおかしいと勘付いた彼は、後ろから陸の体に手を回した。
「これ以上はTRIGGERさんのお邪魔ですよねー。いやーどうも失礼しました。んじゃ俺達はこれでー」
「えっ、ちょ、大和さん!?」
「ほらいいから。行くぞリク」
そして彼は、そのまま陸を強引に 出口へと引きずって行く。その後を、他のメンバーも追う形となった。
しかし、大和が扉に手を掛ける前に。それは勢い良く開かれた。
飛び込んで来たのは、さきほど出て行った姉鷺。彼は必死の形相で言った。
「もう最悪よ!ライブの中止が、今さっき決定したわ」