第31章 こっちを見ろ!!
【side 十龍之介】
IDOLiSH7の新曲を聴いてから、急に俯き黙ってしまった春人。俺達は、彼が口を開くのを待った。
少ししたら、春人は ぱっと顔を上げた。
『隠しても無駄だと思うので、事実だけを述べます。
今の “ JUMP!UP! ” という楽曲、私が今回皆さんに披露しようとしていた物と 全く同じでした』
「「「……は?」」」
誰一人として、彼の言葉が理解出来ない。だからか、口をついて出た言葉は3人共同じだった。
春人は、テーブルの上に伏せ置いていた楽譜を、ぐしゃりと握り込んだ。
すると、それは無残にも一瞬で形を歪に変えた。
「ちょっとそれ貸して!」
天がぐしゃぐしゃになった楽譜を、奪うようにして彼の手から取り上げる。そして、手早くシワを伸ばしてから 目を走らせる。
俺と楽も、身を寄せ合って天の持つ楽譜を覗き込んだ。
そこには、信じられない物が…
いや、春人の言った通りの物が記されていたのだった。
五線譜に並ぶ音階も 歌詞も、さきほど耳にしたばかりの曲と ほぼ同一である。
「曲調が似てるとか雰囲気が同じとか。そういうレベルじゃ、ないね」
「間違いねぇな。これと さっきの曲は…まるきり、同じモンだ」
「え…じゃあまさか…盗作って事か!?」
皆んなの視線がこちらに集まって、慌てて俺は自分の口に手を当てた。
だって、春人が盗作などするとは思えないから。それに小鳥遊プロの人間も、こんな犯罪まがいの事をするとも考えられない。
だから “ 盗作 ” などという言葉は、容易に口にするべき言葉ではなかった。