第31章 こっちを見ろ!!
「どんな曲が出来たのか、凄く気になるな。
ねぇ春人くん!どんな曲風なのか、触りだけでも教えてくれない?」
「だな。どうせ明日聞くんだから、勿体ぶるなよ。春人」
「楽も龍も、子供みたい」
そう言う天も、心なしか好奇心に満ちた表情であった。
『今回の曲は…一言でいうと、TRIGGERらしくない曲です』
私の言葉に、3人は首をひねった。
『今までは、TRIGGERのイメージに沿った、クールで ダークで 格好良い曲調のものを推して来ました。
でも、今回の新曲は そのイメージを一新しました』
「新しい、TRIGGER…みたいな?」
「ふぅん。挑戦、だね」
「いいな。その新しい物に挑戦していく姿勢!TRIGGERらしくて、俺達らしいじゃねえか」
彼らなら、こう言ってくれると思っていた。
挑戦。そして新しいTRIGGER。ファンもきっと、この曲を気に入ってくれるはずだ。
『イメージ的には、IDOLiSH7の “ NATSU しようぜ ” に近いかもしれません。
それくらい、快活で勢いのある曲に仕上げたつもりです』
「…あれをボク達が歌うの?」
「それは随分、思い切ったね!」
「いいじゃねえか!俺はあの曲好きだぜ!」
『あくまでイメージですよ?イメージですからね』
私の作った新曲が、一体どんな曲なのだろうかと。3人は楽しそうに話し始めた。
そんな光景を前に、私は 胸の内から湧き上がる喜びを噛み締めていた。
この時は、目の前の幸せに目が眩んで。知る由もなかったのである。
まさか、あんな地獄のような展開が 私達を待っているなんて。