第31章 こっちを見ろ!!
『昨日、完成しました』
「相変わらず、期日ぴったり」
実は おおよその形は、一ヶ月も前から出来ていたのだが。今回の曲は 私なりにとても気に入っていたのもあり、丁寧に丁寧に手を加え続けていた。そして、ついに微調整を終えて完成形となったのは昨日の夜だったのだ。
「へぇ!楽しみだなぁ」
「今回は、どんな曲だ?」
今すぐにでも聞かせろ、といった勢いの3人。その食い付きが嬉しくて、どうしても頬が緩んでしまう。
『明日、デモをお聞かせしますよ。
今年のオン大に間に合わせる為に、リリースを急がなくては』
「よし。じゃあ明日、曲聞いたら 速攻で特訓だな」
「またギリギリ。まるで去年のブラホワみたい」
『すみません…』
「最高の楽曲を提供するのがキミの仕事。
期間に それを完璧に仕上げるのが ボク達の仕事でしょ。
だから謝らないで」
『そう言って貰えると、助かります。
予定として、明日から特訓開始。1ヶ月後には新曲発表ライブ。と、考えておいて下さい』
「1ヶ月で歌とダンスを完璧に仕上げるのかぁ。天の言う通り、去年のブラホワと全く一緒だ。なんだか懐かしいな」
たしかに 普段の仕事をこなしながら、歌もダンスもマスターするには、一ヶ月は短過ぎる。
しかし、私はTRIGGERを信じている。彼らなら、必ずやり遂げてくれると。
そして、自信もあった。私と彼らが力を合わせれば、必ず大賞を獲れると。
今回の曲は、それくらい会心の出来だった。
「…自信ありげな顔」
天は、嬉しそうに呟いた。
いつもとそう変わらない顔をしていたつもりだったが、彼らには筒抜けなようだ。