第31章 こっちを見ろ!!
まさか、そんなに前の話を持ち出されるとは思っていなかった。
しかし私も、その時の事はよく覚えている。
私はたしか、天に酷い仕打ちをした。
天が、せっかく歩み寄ろうとくれたのに。瞬時にそれを察知した私は、伸ばされた手を払い除けた。
距離を詰められるのが怖くって。自分から彼を突き放したのだ。
「へぇ。お前ら、そんな所に行ってたのか。あの学園祭って言ったら、春人の黒王子しか印象にないぜ」
「いいな!そんな面白そうな展示があったのか。俺も一緒に星空観たかったよ!」
「ちなみに、キミがボクに どんな酷い仕打ちをしたのかも ハッキリと覚えてるから」にや
『その節はすみませんでした!』
ここは素直に平謝りだ。
今から思えば、何も怯える必要などなかった。もっと早くに、彼らとは仲良くなるべきだったのだ。
そんなふうに思えるようになった自分を、私は少しだけ好きになれた。
時には、誰かを頼ってみる。助けを乞う。
そんなふうに考えられるようになった自分を、少しだけ誇らしく思えた。
「そういえば、新曲の進捗はどうなの?」
「あぁ。その新曲で今年の “ オン大 ” 獲るんだろ?たしか」
「新曲、出来たらすぐに聞かせてね!」
“ オン大 ” 正式名称は “ 日本音楽大賞 ”
だから、略して “ オンタイ ”
スポーツ紙を含む各新聞社や、大手テレビ局が中心となって決定する、音楽に関する賞である。
今年、1番輝いた楽曲が そこで決定すると言っても過言では無い。出場するアイドル達の歌唱が、大々的に生放送される。ブラホワに並ぶ、アイドルは決して避けて通れない 登竜門なのだ。
勿論、TRIGGERが大賞を頂くつもりだ。
その為に 新曲を書き下ろすという話は、彼らや社長には既に伝えてある。