第31章 こっちを見ろ!!
仕事上だけの、ただのパートナー。期間限定のお付き合い。
そう思っていた彼らと、こんなにも穏やかな気持ちで食事をする事になるなど。ただの1%だって予測していなかった。
でも、いま目の前に広がる光景は 嘘偽りのない事実。
私の頑なに冷え切った心が、温められたのは事実なのだ。
『私は、貴方達に会えて 本当に良かった』
するりと自然に溢れた言葉。
TRIGGERメンバーは、驚いた瞳を私に向けた。
『TRIGGERが、好きです。
こんな事を言うのは、私らしくなくて 変かもしれませんが…
私は、貴方達の事を 仲間だと、思っています』
楽は、グラスをゆっくりと置いてから さらに目を大きくして言った。
「お前。もしかして、酔ってんのか?」
『…そうかもしれません』
そう答えはしたが、そんなわけはない。
私は、漫画や小説の可愛いヒロインではないのだから。グラスワインの2杯や3杯で妄言を吐いたりはしない。
「何も変じゃないよ、春人くん。俺も、同じ気持ちだから。
天や楽だけじゃなくって、君の事も 俺は仲間だと思ってる」
こちらが溶けてしまいそうになる、甘い笑顔で龍之介は言った。
『良かったです。こんな気持ちは、迷惑だと言われるかと。少しだけ覚悟して口にしたので』
楽や龍之介は別として。ドライな性格の天には、そう思われるかもしれない。
そんな不安な気持ちで天を見やると、彼は目を伏せて 口を開いた。
「ボクは と…友達 だと思ってるよ。キミの事も」
『天…』
「1年前の、学園祭の仕事覚えてる?」
【8章 138ページ】
『もちろん、覚えていますよ』
「空き時間、一緒に訪れた “ 星斗の館 ” は?」
『…覚えてます』
「あの時に、一緒に架空の星空を眺めた時から ボクは思ってた。キミとは、友達になれるって。
はっきりと、今でも覚えてるよ。あの時の気持ち」