第31章 こっちを見ろ!!
『か、帰りたい…』
「ははっ。まぁそう言うなって」
「そうだよ!俺も祝いたい。天と、楽と、それに春人くんと一緒に」
「ま、付き合ってあげても良いけど」
楽がワインボトルに手を伸ばしたのを見て、私はそっと横取りする。
そして、天以外のグラスに注いでいく。
ゆっくりと、たっぷり空気を含ませながら注ぐのが、美味しくワインを飲むコツだ。
それから少しすると、天用に頼んだブドウジュースが到着した。これで、全員に飲み物が行き渡る。
4人は、グラスワインを軽く持ち上げ 顔を見合わせる。
「ちょっと。早く何か言って」
『こういう場合、リーダーが乾杯の音頭をとるのでは?』
「いや、お前が俺達を集めたんじゃねえか。俺に振るなよ」
「うん。今日は俺も、春人くんの言葉が聞きたいな」
私が彼らを招集した理由はバレたのだから、楽に仕切って欲しかったのだが。どうやらそうもいかないみたいだ。
私は、改めて気合を入れてから口を開く。
『…えっと』
じっと、6つの瞳が私を捉える。
どんな言葉を聞かせてくれるんだ?熱い言葉を頼むぜ。とでも言いたげな、熱視線を送ってくる楽。
あまりらしくない言葉を並べたら、明日は雨でなく槍が降るかも。とか考えていそうな、ニヤニヤ顔の天。
とにかく、期待に満ちたキラキラの目でこちらを見てくる龍之介。
『……乾杯』
「なんか言えよ!!」
「何かは言いなよ」
「あっはは!乾杯!」