第30章 あなたの夜のお供に♡モモちゃんでーす
『それにしても、今回のは不意打ちでした…。私、不意打ちって駄目なんですよ。
自分の手札が整っていないのに、強制的に戦闘が始まるような感覚が 恐ろしくて恐ろしくて…。だからこそ、いつも相手の情報は前もって出来る限り調べるんです。本当にもう。あぁ、怖かった…』
「こんなに怯えてるエリちゃん初めて見たっ。かーわいい!」
『私の話、聞いてますかねぇ!?』
「あはは。ごめんごめん。ちゃんと聞いてる。でもね、エリちゃんは 肩書きとかそういうのにこだわり過ぎ!
今日は結局、最終的には仕事の話になっちゃったけど…」
私達が名刺交換をする際、百は恨めしそうに その様子をじーっと見ていた。
彼は、よほど私に仕事を忘れて欲しかったのだと思う。
「オレは、エリちゃんに楽しんで欲しかったんだよね。癒されて、欲しかったんだよ」
『…私、今日凄く 楽しかったですよ。誰かを接待する、という目的以外で食事を楽しんだのは 久し振りでした』
私が言うと、彼は嬉しそうに顔を上げた。
「ほ、ほんとに!?良かった。その言葉が聞けただけで、オレは超ハッピーだよ!!」
『加藤さんも、佐藤さんも、楽しい方でした。突然やって来た私にも、優しくしてくれて。
さすがは、百さんのお友達ですね』
「でしょ!?えへへ!2人とも、オレの自慢の友達だから!」
時間も時間なので、タクシー乗り場には 帰りの足を探す人々が列を成していた。
私と百も、そろそろあの列に並んだ方が良いのかもしれない。