第30章 あなたの夜のお供に♡モモちゃんでーす
そうか。私は、疲れていたのか。
言われてみて、改めて考えると合点がいった。
本来の私なら、尻の1つや2つ撫でられてもイライラなどしなかった。
ここ最近の接待続きで、いつのまにか気力を消耗していたのだろう。些細な事でも余裕が無くなってしまうくらいには、私は疲れているらしい。
「言われるまで気が付かないなんて、やっぱり君は危うい子だね」
「春人ちゃん大丈夫!?ご飯はちゃんと食べてる?夜はしっかり寝れてる?特に朝ごはんはしっかり食べて!夜寝る前はあまり携帯をいじっちゃ駄目だからね!」
「いや、お母さんかい!」
「お腹を痛めて産んだ子だもん、春人ちゃんは!オレは心配で仕方ないよっ」
「いやだから、お母さんかい!」
やはり、私は相当疲れているらしい。久々のRe:vale劇場も、心から楽しむ事が出来ない。
と いうか。何故この2人は、いつも私を子供役に仕立て上げてしまうのだろう。たしか以前もこんなシチュエーションがあった。
腹が立ちこそしないが、突っ込む元気が出ないのだ。
そんな私を横目で見ていた百と千。どうやらターゲットを龍之介に切り替えるらしい。
彼を見る目が “ ほら!ツッコミ待ちだよ! ” と言っている。
私は観客に徹する事にした。
頑張れ、十龍之介。君なら出来る。
「えぇっ、俺ですかっ!?じゃあ、えっと…
む、息子さんを、僕に下さい!お母さんっ!」
「おおぉ!いいねいいね!龍がまさかの、ボケ返しという高度なテクニックを!」
百。どうしてそんなにも嬉しそうなのだ。
「駄目だ。うちの子は、アイドルなんて不安定な職についている男の所にはやれない」
千。貴方、自分もアイドルのくせに…
「俺、諦めません。いつかお父さんとお母さんにも認めてもらえるような、もっと凄いアイドルになってから、また来ます」
「…ふ。いい目をしている。まるで昔の自分を、見ているようだな」
「うるうる。こんな素敵な人が近くにいてくれるんだから、春人ちゃんは、幸せね」
『ええ それはもう。目眩がしてくるほどに』
ここにいたのが仮に、龍之介ではなく天だったら…。ここまで見事な大団円は迎えなかっただろうに。
私は、そんな不毛な たらればを考えながら天を仰いだ。