第30章 あなたの夜のお供に♡モモちゃんでーす
どこの世界に、アイドルに愚痴を垂れるプロデューサーがいるだろうか。しかし、龍之介が簡単に引き下がるような男ではないのは分かっていた。
私を仲間だと思ってくれているのも分かっている。そして彼は仲間が問題を抱えているのを、決して見ない事にはしない。
懐の深い男なのだ。
「話してみないか?きっと、吐き出すだけでもスッキリすると思うよ?」
『大した事では、ないんですよ。本当に』
“ それでもいいから ” と、優しい笑顔を浮かべる龍之介。
そこまで言うなら。と、私は話を始める。
『あのAD、私の臀部を撫でたんですよ』
「ええ!?
ご、ごめん。ちょっと取り乱しちゃった。
さっきのADさん…ってことは、男の人 だよね」
この業界は、男とか女とかの概念が薄い。それは、演者にもスタッフにも言える。
「そっか…。それは、嫌な思いをしたね」
『ですよね。せめてプロデューサーぐらい偉くなってから触れって話ですよ』
「怒るところズレてるよ春人くんー!?」
『…なら、ディレクターでも妥協します』
「断じてしないでくれ…」はぁ
龍之介が 頭を抱えて溜息をついたところで、私はポケットに忍ばせた新しいミントタブレットのケースを開ける。
そして2.3粒を口に放り込んで、ガリっと噛んでから気が付いた。
あ、またやってしまった。
これでは、本当にミントタブレットジャンキーではないか。