第30章 あなたの夜のお供に♡モモちゃんでーす
——TRIGGER 十龍之介様 楽屋——
『………』バリバリ
「……えっと…」
『………』バリバリ
「あ、あの…春人、くん?
ミントタブレットって、そんなにラムネみたいに勢い良く食べるものじゃないと、思うんだけど…」
ノートパソコンを叩くように入力していた私に、龍之介は言った。
そして心配そうに、私の顔を覗き込む。
『そんなに、食べてました?それは無意識でした』
「無意識であんなにバリバリ食べてたのか!
良くないよ?食べ過ぎるとお腹壊すって言うし」
『あぁ…そうですね。すみません、気を付けます』
私は一度、ノートパソコンを畳む。心配顔の龍之介を見ていると、これ以上ぶっ続けで仕事をしようという気になれなかったからだ。
対面のソファに腰掛ける彼に、すぐ謝罪の言葉を口にした。
「はは。春人くん、イライラするとミントタブレット噛む癖があるよね」
『え…そうなんです?』
「うん。それも、凄い勢いで」
私は、パソコンの横に置かれたタブレットケースを手に取る。左右に小さく振ってみると、スカスカという手応え。
今日買ったばかりだというのに、中身はもう空だった。
自分が無意識のうちにタブレット狂になっていた事も怖いが、それよりも もっと由々しき事態なのは…
『私、イライラしてましたか』
「うーん、少し?」
『…すみません。貴方にとって、せっかくの 貴重な休憩時間だというのに。私のせいで、気も休まりませんよね』
「はは。そんな事、気にする必要ないよ」
自分の感情のコントロールが、乱れている。それを龍之介に悟られてしまうなんて。
あってはならない事態だ。
『いえ。そういう訳には行きません。
タレントの前で、苛立った気持ちを無意識で晒してしまうなど』
「本当に、気にする事ないのに…」
『龍は多大なストレスを感じながら、裸同然の格好で撮影に臨んでいるんです。そんな貴方がイライラもせず耐えているというのに、私ときたら、簡単に苛立って…自分が情け無いです』
「う…。た、確かに今日の衣装は露出度半端なかったけどね…って、俺のことはいいから!
春人くんは、一体 何にイライラしてたんだ?」