第29章 《閑話》とあるアイドルプロデューサーの休日
『あとは、服…ですかね。
もっと、体のラインが出る服を着た方が良い』
「え、でも私、その…。デブだから…。出来ればゆったりした服の方が」
『貴女は太くないです。骨格が逞しいだけですよ』
「た、逞しい…」
『だから、無駄な肉はそんなに付いていない。その証拠に、出るところは出てて、引っ込んでるところは引っ込んでるでしょう』
彼は躊躇する事なく、私の腰のラインを撫でた。
「ひやっ!?」
『何色が好きですか?』
「え?」
聞き間違いかと思った。このタイミングで、好きな色を聞かれるとは思わなかったからだ。
しかしどうやら、間違いではないらしい。彼の目が、じっと私の答えを待っている。
私が、えーーと、とか。うーーんと、とか唸っている間に、フロアはどんどん熱を上げていく。
ミュージックもダンスも、最高の盛り上がりに差し掛かっているのだ。もうすぐ、フィナーレを迎える。
そして、私がようやく答えを叫んだその時。
「えっと、じゃあ… 赤!!」
パァァン!
という破裂音と共に、パーティペーパーが視界を埋め尽くした。色取り取りの、紙吹雪やテープが頭上から次々に舞い降りてくる。
そして彼は、その中から1本の銀テープを指先で捉えた。そのテープの色は、私がさきほど選んだ赤い色。
『赤、良いですね』
流れるような動作で、テープが私のウェストラインに巻き付いた。それは、まるで私の為に用意された特別なリボンのようで。
腰のくびれを際立たせ、寸胴だったスタイルにメリハリを付けてくれた。