• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第28章 く、食われるかと思った




私と楽、監督、スタッフにその他の演者。場にいた全員が、もれなく彼に、呑まれた。
大和が纏う雰囲気に、放たれる非凡なオーラに、圧倒されたのだ。


『…楽』

「あぁ。あいつ…もう、入ってる」

『きっとすぐに、撮影が始まりますよ』

「分かってる」


楽はすぐさま立ち上がる。その顔は、怖いくらいに真剣だ。彼も彼とて、八乙女楽の仮面を脱いだ。

すると、大和をここへ案内して来たスタッフが、遅れて声を上げた。


「に、二階堂大和さん、入られます」


隣に立つ 異様なオーラを放っている大和に対し、明らかに遠慮した声量だった。
が、それでも監督の意識を呼び戻すには十分だったらしい。

彼は黄色いメガホンを取り、椅子から立ち上がった。そして楽の方を見て、スタンバイが整っているのを確認。
大和は、言わずもがな準備万端の臨戦体制である。


「よ、よし!すぐ回すよ!」


監督が急ぐ気持ちは、よく分かる。
きっと、大和を見て確信したのだろう。今から、良い物が撮れると。今の彼を、早くカメラに収めなければと。

カメラ、マイク、照明等のスタッフに準備を急がせると “ アクション! ” と声を張り上げた。




「お疲れ様。相変わらず、怖いくらい早くて的確なメス捌きだったな」

「どうも」

「本当に、悪魔とでも契約してるんじゃないだろうな。そう思うくらい、異様な腕前だよ。あなたは」

「はっ。今よりもっと上手く早くなれんなら、何者とでも、いくらでも契約してやるよ」


ずっと敵対していた、内科の楽と 外科の大和。彼らが初めて協力し、末期患者を救った後の このシーン。

修羅場を共に潜った事で、2人の距離が縮まる 重要なシーンだ。

楽が差し入れたコーヒーを、大和が受け取る。屋上から見える夕陽に向かい、2人は紙コップからコーヒーを啜る。

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp