第28章 く、食われるかと思った
大和はこちらに背を向けて 眼鏡を外す。そして南京錠のダイヤルを回し始めた。
やがてそれは、カチャ という音と共に 解錠される。
報復という名の、嫌がらせ(プロデュースby私 feat環)が終了したのだった。
「…スッキリした顔しちゃって。ったく」
『それはもう、お陰様で。
あ。少しだけ鼻が赤いです?』
「おいおい困るんだよなぁ。アイドルの顔に傷を付けてもらっちゃ」
『ふふ。どうもすみません』
「っていうか、眼鏡に南京錠付けてやろうって…むしろよく思い付いたな。お兄さん感心しちゃったよ」
『眼鏡をかけている人に対する、最大限の嫌がらせは これだ!と思いまして』
「うん。いやほんと、もうセンスの塊。
ま。それで あんたの気が済んだんなら安いもんだけどな」
私達は1週間ぶりに、互いの顔を見合わせて微笑んだ。
「随分と、久しぶりな気がするなぁ」
『何がですか?』
「あんたの顔を、ちゃんと見たのが」
『そうですか。またしばらく見られないかもしれませんので、どうぞ今の内に目に焼き付けておくといいですよ』
「お。そうだな、じゃあ遠慮なく」
『冗談ですけど』引
こんな会話。わだかまりが取れ、仲直りをしたカップルのようだ。なんて恥ずかしながら考えてしまった。
そして、そんな様子を楽が目を丸くして見ている。
「…お前ら、なんかあっただろ」
そんな楽の質問に対し、私と大和は示し合わせたように、同じ言葉を口にするのだった。
「『べつに、なにも』」