第28章 く、食われるかと思った
良かった。報復などと言うから、もっと邪悪なものを想像してしまった。
環が大和の眼鏡に 指を押し付けている図を思い浮かべると、つい顔が綻んでしまう。
『可愛いね。微笑ましいというか』
「眼鏡キャラにとって、眼鏡は重要なアイデンティティなんだって、ナギっち言ってた」
『あはは、そうかも。それくらいの報復なら…、私もありかも』
「だろ!?俺とえりりんで、せっかくだからなんかヤろーぜ!」
『タマちゃん、堂々とイタズラ出来る名目探してるだけでしょ』
「そ、そんな事ねえから!俺は、あんたの王様プリンの仇取ってやりてぇだけだから!」
あからさまに、ギクっとした環は置いておいて…私は報復の計画を立て始めた。
そして、アイデアは意外にもすぐに浮かぶ。
私はポケットをまさぐり、ある物を取り出した。
『はい。ここに取り出したるは、何の変哲もない南京錠』
「ポッケに何入れてんだよ」
『タマちゃん耳貸して!あのね、コレを——の、眼鏡に、——して、それで』
耳打ちした内容を聞いた環の表情は、みるみる内に明るくなる。
「ぎゃははは!それ最高!ちょー面白い!俺も見たい!ヤマさんどんな顔すっかなあ!いつやるいつやる!?」
『ふふふ。慌てない慌てない!えっとね…』
私は、スケジュール帳を確認する。
1週間後、大和は楽とドラマの撮影で顔を合わせる予定がある。すなわち、私もその際には彼と会う事になるだろう。
どうせなら、イタズラされたて ホヤホヤの大和を、直接この目で拝みたい。
『6日後の夜!この日に実行!
出来る?タマちゃん』
「まっかせとけって!ヤマさん、風呂入る時は眼鏡ノーガードだから余裕!」
たしかに、風呂に入る時に眼鏡をガードしている人間は稀だろう。
とにかく、決行は6日後の夜となった。
1週間後、大和と会うのが楽しみだ。