第28章 く、食われるかと思った
私は席を立とうとする環に縋り付いた。
「でも、ヤマさんがえりりんとの約束を破ったのは、マジなんだろ?」
『まぁ、ね。でもこの話には続きがあって。二階堂さん、謝ってくれたの。それで…えっと、
“ たしかに今、手元にチョコプリンは無いけど…。でも、手に入れられるように努力する。頑張って手に入れたら、絶対 お前にあげるからな ” って、言ってくれたんだ』
私の身体を、イチゴプリン。
千葉氏のコネを、チョコプリン。
かなり無理くりな改変ではあるが、きっと環には私の失望が伝わったはずだ。
その証拠に、自分の事ではないのに、環は未だに不服そうな顔付きだ。
「俺ならぜってー許せねー。確実に、ホーフクしてやんよ」
『ふふ、報復って。タマちゃんは物騒だね』
「前に、ヤマさん酔っ払って帰って来た時、俺のゲーム機、踏んで壊した事があって」
『踏まれるようなところに置いておくタマちゃんにも問題があるのでは?』
「んで、新しいの買ってやるって言われたけど、データはもう死んじまってるわけじゃん?」
『うーん、確かにそれは辛いね』ゲーマーにしか伝わらない痛恨の一撃
「どーーーっしても気がおさまんなくて、俺はヤマさんに報復した」
『ちなみに、どんな報復を…』
環はテーブルに片肘をつき、ニヤリと悪い顔で犬歯を覗かせた。
「ヤマさんの眼鏡取り上げて、指紋でベッタベタに汚してやった」
『………じ、地味ぃ…』