第28章 く、食われるかと思った
「んで?ヤマさんとの “ 取り引き ” って、なに。でもって、えりりんは何で あんなに怒ってたんだよ」
スパゲティをちゅるんと啜って、環はこちらを見つめた。
さて、どうやって やり過ごそうか…。
まさか彼に、大和と私との間にあった仔細を話すわけにはいくまい。セフレだとか、千葉志津雄の隠し子だとか、とにかくタブーが多過ぎる。
とにかく、私が大和に抱いた怒りがどれほどの物だったか。それを環にも共感してもらえるような、彼用の例え話を作ってみようか。
『はい。ここに、期間限定のイチゴ味王様プリンがあるとします』
「突然の王様プリン!!」
『それを私が2つ持っています。そこへ二階堂さんが来て、こう言いました。
“ おう、美味そうなもん持ってんじゃねえか。でも俺は、期間限定チョコレート味の王様プリンを持ってるぜ。どうだ?お前のそれと、交換しないか? ” と』
「おお!交換したら、イチゴもチョコも、どっちの王様プリンも楽しめるじゃん!!
…でも、なんかそのヤマさんガラ悪くてやだ」
環は、ただの例え話に真剣に聞き入っている。テーブルから身を乗り出し、まるで自分自身の話であるかのような真剣さを見せた。
『私も得だと思って、交換に応じる事にしました。そして二階堂さんにイチゴ味のプリンを1つ手渡します。すると彼は…
“ チョコ味のプリンは俺の家にあるから、後で渡すな ” と言って、イチゴ味のプリンを、ペロリと平らげてしまいました』
「まぁ後で貰えるなら、べつにいいけどな」
『ところが翌日。いざ私が二階堂さんの所へ赴き、チョコ味の王様プリンを要求したら…
“ 実は、最初っからチョコ味の王様プリンなんてなかったんだよーーん ” と、彼は言いましたとさ』
「………ちょっと俺、今からヤマさん殴ってくんよ」
『タマちゃん落ち着いて!!例え話だから!』