第1章 もしかしなくても、これって脅迫ってヤツですか?
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すっかり帰りが遅くなってしまった。しかし、家はもうすぐそこだ。
街灯が少ない上、この時間だ。人通りもほとんどない。
普通の女性なら、不安に感じるかもしれない。痴漢や引ったくり。そんな犯罪に巻き込まれる可能性を危惧してだ。
しかし私にとっては大した問題では無い。
アイドル時代、自分の身を守る為に護身術を習っていたから。
というか、今も自主練は欠かしていないので体は余裕で動く。痴漢でも引ったくりでも、どんと来いだ。返り討ちにしてやる。
「すみませぇん」
!!どんと来いとは言ったが、まさか本当に声をかけてくるとは…
私はすぐ様振り向いて、声の主を確認する。
そこには、桃色の髪をセクシーに流した、やけにガタイの良い女性?が立っていた。
『お、おにぃ…いや、おねぇ…、お兄さん?』
「お姉さんよ!!」
どうやら彼?は、私が迷いに迷った挙句、お兄さんという呼び方を採用した事に怒っているようだ。
おぉ、紛う事なき おかまさんだ…綺麗なおかまさん。大きいな…。
『…お、お姉さんでしたか。それは失礼』
「こんな綺麗なお兄さんはいないでしょ?」ふふ
私が呼び名を訂正した事で、彼は満足気だ。
『…その綺麗なお姉さんが、私に何の用ですか?』
「あら、そうだったわね。
突然で申し訳無いんですけど…アナタ…」
これは、ただの直感なのだが…。彼は多分、私が最も聞きたく無い言葉をこれから吐くのだろうなぁ。
私のこういう時の 嫌な予感ってのは、高確率で当たる。
「伝説のアイドル、Lioさん よね?」
ほら。やっぱり。