第27章 ワタシのガールハントセンサーも鈍ったモノです
「いらっしゃいま……」
『2人です』
不自然に言葉を切ったファミレス店員。そこは、いらっしゃいませ一択だと思うのだが。
私と環を凝視したまま、固まってしまっている。
「………」
「??
なんで店員さん固まってんの?」
『あの』
「はっ!!し、失礼しました!ご案内します!」やっべぇ意識飛んでた!
まぁおそらく、環の存在に気付いて感極まったか、驚いたかのどちらかだろう。
MEZZO" ほどの躍進ならば、既に街中の知名度もそれなりに高いはずだ。
やや間があったものの、時が再び動き出したように 彼女は席へと案内してくれた。座ってすぐ、環にメニューを差し出す。
『タマちゃん、晩御飯は食べました?』
「食ったけど食う」
『前と同じ…』
「俺ミートスパゲティ!と、ドリンクバー!」
『それも前と同じ!』
環の影響からか、私も 前回と同じ物を頼もうという気持ちになってきた。
というわけで、環はミートスパゲティ。私はシーフドドリア。そしてドリンクバーを2つ注文した。
彼はすぐさまジュースを取りに走っていった。帰って来たその両手には、メロンソーダと 私用のトニックがあった。
『相変わらず、メロンソーダ好きだね。甘ーいの』私の分もありがとう
「やっぱ安定だよなー。
ってかえりりんはさ、甘いの、嫌いになったのか?」
『好きだよ?生クリームもあんこも、プリンも。でもなんていうか…人工甘味料的な味が苦手なのかな』
「ふーん」
自分で聞いておきながら、環はなんとも興味なさげにストローを吸った。
そして少し後、注文の品が届く。
料理を運んで来た店員が、私達に舐めるような視線を向けていたのが気にはなったが…
とにかく手を合わせて、いただきます をしてから、食事を開始する。
と、私はそこで はたと気が付いた。
『あ、タマちゃんちょっと待って』
「ん、何?」
『パスタで服汚したら、また逢坂さんに怒られるよ?
ほら。紙ナプキンでエプロン作ってあげる。付けるから、ちょっとこっち来て』
「えりりん ちょー器用じゃん!サンキュー!」
こちらに身を乗り出した環。襟首にエプロンの端っこを突っ込んでやるのだった。
そして、そんな様子を店員2名が、ニマニマと眺めているのだった。