第27章 ワタシのガールハントセンサーも鈍ったモノです
「なるほど。二階堂さんと中崎さんの、さきほどの言い争いは 本当に喧嘩していたわけではなく、ドラマの台本の読み合わせだったんですね」
「なるほど。理解しました。アナタの恋人役を、春人氏が演じていたのですね。
ところで、ヤマトのお相手はラグビー選手なのですか?変わった恋愛ドラマです」
「んなわけあるか!!ちゃんと可愛い女の子だから!」
よくもまあ、こうも舌がクルクルと回るものである。敵だったらと思うと恐ろしいが、こちらの味方ならば頼もしい限りである。
しかしながら、環はどこか不満げな顔付きで言う。
「……へんなの。それって、どんなドラマなわけ?どんな台本で、どんな役なわけー?!」
「タマは疑り深いなぁ。
内容か?とにかく どっろどろの恋愛ドラマでなあ。春人は、俺のセフレ役。一線を超えた俺達は、せっかく心も繋がりそうになったってのに、俺のポカで春人がブチ切れてさぁ大変。大喧嘩も大喧嘩。さぁ2人は無事に仲直りできるかー?
って、回の台本」
「なんとも興味を引かれる内容ですね。ヤマト、放送日はいつですか?ワタシきっちりと録画して観ます」
「んー、あはは。いつだったかなー?」
「そーちゃん、セフレってなに」
「た、環くんは知らなくても大丈夫だよ!!」
場は、完全に落ち着いた。やはりIDOLiSH7はTRIGGERに比べイージーだった。
こうなれば、早く立ち去った方が良いだろう。
『そろそろ帰ります。皆さん、お騒がせしました』
「あ、いえ。またいつでもいらして下さい」
「台本の読み合わせ、迫真の演技でした!さすがTRIGGERのプロデューサーさんですね!」
「そーちゃん、それTRIGGER関係無くない?」
「春人氏!次に会うときはぜひ、アニメ鑑賞会を致しましょう。ワタシの珠玉のコレクションを、ご覧に入れますよ」
大和だけは、何も口にしない。別れの挨拶さえも。
帰り際にチラリとその顔を盗み見ると、なんとも不安そうな視線で、こちらを見つめているのだった。