第27章 ワタシのガールハントセンサーも鈍ったモノです
大和が、何を言っているのか理解出来なかった。
『相変わらず、二階堂さんは、人が悪いですね。だって私達は、取り引きしたじゃないですか』
「……」
千葉志津雄とのコネクションを用意する代わりに、大和は私を好きなようにする。
昨夜、私達はそういう取り引きをしたはずだ。
『二階堂さんの事だから、どうせまた 悪い冗談を言っているだけなんでしょ?』
「冗談じゃないから、謝ってるんだろ」
『はは、またまた。
貴方くらい器用な人です。たとえ腹から憎んでる相手とでも、実は裏で通じてるとか。それくらいの事はしているんでしょう?』
「だから、してないって。正真正銘、絶賛絶縁中だ」
大和の言葉が理解出来てくると同時に、怒りがふつふつと沸いてきた。自分の底から熱いマグマのような感情がせり上がって来る。
『あり得、ない…。私の事、騙したんですか』
「いや、騙すつもりは無かったんだけどな」
『騙したと変わらないじゃないですか!信じられない!』
信じられなかった。
昨夜の格好良かった大和も、今朝の優しかった大和も、全て私の中で崩れて消えた。
「だいたい、あんた本気で思ってたのか?俺が復讐したいほど憎んでる親父と、今でも仲良く連絡取り合ってるって!」
『ええ思ってましたよ!』
「ありえねえだろ…!」
『ありえますよ。私なら、絶対に利用するから。私がもしIDOLiSH7のメンバーで、本気でIDOLiSH7を上へ押し上げたいと願うなら!
殺したいほど憎んでる親とだって、世界を滅ぼそうと企む悪魔とだって!私なら仲良くしますね!』
大和なら、それくらいの器用さを持ち合わせていると思っていたが。どうやら違ったようだ。
それに、最初から彼は私を騙す気でいた。もう、これ以上この男に関わるのはよそう。
『帰ります。2度と顔も見たくありません』
「!!待てよ!」
悔しかった。
ほんの一時でも、この男を愛おしいと。幸せでいて欲しいと願ったのに。
彼は私との約束を反古にした。
私は、大和の制止を振り切って部屋を飛び出した。