第26章 居なくなっちまうんじゃねえの?
その後、私達はホテルを後にした。
バイクの後部座席に大和を乗せて、とりあえず小鳥遊事務所に彼を送り届ける。
タクシーで帰るという手もあったはずだが、大和たっての希望だった。
無事に到着すると、メットをとって大和は言った。
「やっぱ良いな、バイク。俺も大型の免許取ろっかな…」
『小回りも効くのでおすすめですよ。
でも 私の後ろでよければ、いつでも乗せてあげます。それで満足出来るなら遠慮なく言って下さい』
「お、優しいお言葉。じゃあまあ当面は素直に甘え」
「あ゛ーーー!!な、なんで、なんでヤマさんがそこに乗ってんだよ!!」
「ちょっと四葉さん、公共の場でそんなに大きな声を出さないで下さい。
中崎さん、おはようございます。昨日はお世話になりました」
小鳥遊事務所の前にいたのは、制服に身を包んだ環と一織だった。おそらく、これから登校するタイミングなのだろう。
とりあえず私は、2人に朝の挨拶を返す。
後部座席に座っていた大和に目くじらを立てる環は、相変わらず地団駄を踏んでいる。
「そこは俺の特等席なんだぞ!なんでヤマさんが、そこにいんだよ!今すぐどけよ!どけってばー!」
「うるさいぞータマ。それにもう退いてるだろ」
『四葉さん、ワガママ言ってはいけませんよ。私は必要とあらば、二階堂さんであろうと赤の他人であろうと荷物であろうと、ここに載っけますよ』
「うーん、なぁ。どうしてもその羅列じゃなきゃ駄目だったか?」荷物って
ジト目をこちらへ向ける大和には気付かないふりをして、私は改めて 高校生2人に目を向ける。
制服姿は、初めて見た。
同じ制服を着ていることから、2人が同じ高校に通っているのは容易に想像出来る。
なにより、環がきちんと学校に通っているのだと分かって安心した。それに、小さい頃から見知っている彼が こうして高校生をやっているのを見るのは、なにやら感慨深いものがある。