第26章 居なくなっちまうんじゃねえの?
『タマちゃんと、百さんと千さん、ですかね』
「…まあ、そうなるか」っち
大和は何故か苛立った様子で舌打ちをした。また千の名前に反応したのだろうか?
『あぁそれに、タマちゃんの前だと、この格好でもたまに素の自分が出る気がします』
「そうか。やっぱり昔馴染みってことで、多少気も緩んでるのかもな。
とにかく、そのメンツ…いわゆる “ お友達 ” と定期的に会うべきだと俺は思う。勿論、エリとしてだ。
そしたら大丈夫だろ。エリはきっと、いなくならない」
『……二階堂さん…。ありがとう、ございます』
私の心からの感謝が伝わったのか、大和は優しい笑顔を返してくれた。
そして、私をもっと安心させようとしてくれたのか、包み込むような抱擁をくれる。
温かな体温と、心地良い鼓動が、私を落ち着けてくれた。
しかし、大和は寂しそうに呟いた。
「……でかいな」身長
『ブーツ込みで175センチあるので』
「俺と変わらないじゃねえか」ガク
私は、くつくつと笑いながら、ほとんど視線の高さが変わらない大和の背中に手を回した。
「…そういえば、1人忘れてた」
『え?』
「あんたの性別を知ってる人間だよ」
『あぁ、それってもしかして…』
「そうそう、俺」はは
『そうでしたね。ふふ、貴方も私の “ お友達 ” になってくれるんですか?』
「……ただの友達、で 収まりたくねえな。
なぁ、あんたは?」
大和は、私の顔を覗き込んだ。
身長差が縮まったせいで、今までよりずっと距離が近い。
「エリは 俺との関係性 “ お友達 ” で、いいわけ?」
『……いえ。私達、お友達 という枠には、収まり切りませんよね』
「え、まじで?ちょっと、俺の言ってる意味ちゃんと分かって言ってます?それ。
つまりは俺達、今この瞬間から、
恋び」
『セフレ』
「『え?』」
いま私達が同時に口にした言葉、違う単語だったような…。
よく聞き取れなかったが、大和はなんと言ったのだろうか?
『今、なんて言いました?』
「いや、ごめんなさい…高望みしました。
まぁ、あんたが言ったので良しとするか。
……今のところは、な」
小さく言って大和は私に、啄ばむようなキスをした。