第26章 居なくなっちまうんじゃねえの?
春人と話していると、まるで将棋やチェスをしているような感覚に陥った。
彼女はどう思っていたのか知らないが、俺自身はその感覚は嫌いじゃなかった。
でもやっぱり、互いに良い印象は持っていなかったと思う。それが、今ではこうして同じベットで眠りにつこうというのだ。
本当に、人生は何が起こるか分からない。
“ 私は…大和の…助けになりたいと 思うよ ”
彼女がそう思っているように、俺だって同じように思っている。
というか、エリは気付いていないようだが、俺はもう随分と彼女に救われている。
エリは、俺自身が欲しいと言ってくれた。IDOLiSH7でいても良いのだと教えてくれた。
それに…ずっと憧れていた “ 絆 ” をくれた。
俺は、エリとの間に 確かな絆を見た。そう感じてしまうのは、ただの自惚れだろうか?
とにかく、これだけは絶対だ。
“ 俺も、エリを助けてやりたい ”
この気持ちだけは…気のせいでも、気の迷いでもない。間違いなく自分の中に芽生えた、確固たる意志。
「………」
気持ち良さそうに、俺の腕の中で眠るエリの寝顔。しばらく眺めていると、徐々に睡眠欲が顔を覗かせた。
瞳を閉じて、思考する。
俺に、何が出来るか。
彼女の助けになるには、どうするべきか。
そうだ。
エリを見ていて、1つだけ、ずっと気になっていた事がある。
その “ 心配事 ” は、このまま放っておくと、エリにとって良くない事態に陥るかもしれないのだ。
自分が “ それ ” を解消出来るほど役に立てるかは分からない。が、とにかく明日にでも “ それ ” について、エリと話をしてみよう。
意外とあっさりと目標が立って、俺は素直に睡魔に身を明け渡した。
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