第26章 居なくなっちまうんじゃねえの?
『なに、大和。もしかして、私に情でも湧いちゃったの?』
「……どう思う?それより、あんたはどうなんだよ。
俺に、情は湧いたのか?」
『そうだね。多分、そうなんだと思う』
「い、意外な答えだな。でも情にも色々あるわけだけども…。一体、エリは俺に どんな情が湧いたんだろうな」
『ふふ、さぁ。それはどうかな』
エリははぐらかして、瞼を閉じた。そして、またゆっくりと瞳を開く。
もう眠りに落ちるものだと思っていたので、また目が合って 少しだけ驚いた。
エリは、そんな俺の頭に手を伸ばす。
『どんな情か…それは、私にもよく分からないけど、でも…大和が、幸せになればいいなって、思ってるのは本当。
いま、貴方を苦しめている問題や悩みが、早く解消されれば良いって、願うのは 本当。
大和は、きっとIDOLiSH7の中では お兄さんって立ち位置だろうから。相談とか愚痴とか、言いにくい時もあるかもしれない。
でも、しんどい時は、ちゃんと言って。しんどいって…。もう嫌だ、疲れたって…。
その時、愚痴る相手がいなかったら、私でも良いから。
私は…大和の…助けになりたいと 思うよ』
エリの細い指が、俺の髪に絡む。そのまましばらく髪を梳かすように撫でていたのだが、ついに睡魔に負けてしまったらしい。
すぅすぅと、小さな寝息を立てて、髪を撫でる手もやがて止まった。
「…なんで、あんたは…」
俺の事が、そこまで分かるんだろう。
もしかすると、俺ですら気付いてない俺を、彼女は知っているのかもしれない。
「エリ、ありがとうな」
眠りに落ちた彼女を、出来るだけ優しく抱き締める。
お礼を呟いた声が、掠れそうになったのは…
エリには、秘密。