第25章 その綺麗な顔が、どんなふうに歪むのか
『じゃあ次は、私がお願い事言う番!
の前に…。ちょっとシャワー浴びて来ていいかな?』
「え、なにそれ。その台詞いいな。ちょっとドキッとしちゃったんだけど」
『いや変な意味じゃなくて!
私今日いつも以上に張り切って動いて、汗だくになったのに シャワーのひとつも浴びないでここに来たから。いい加減 限界スッキリしたい』
「そらご愁傷様。ゆっくりどーぞ」
大和からは時折、コロンの匂いに混じって ふわりと石鹸の香りがした。私とは違い、ここに来るまでにシャワーを浴びる時間くらいはあったのだろう。
私は言葉に甘え、シャワーを頂く事にした。化粧ポーチを洗面台へ置いて、浴室へと足を踏み入れる。
『……』
(さて どうやって、千葉氏へ続くパイプを頂戴しようか)
頭から熱い湯を被れば、頭がスッキリして 妙案でも浮かぶかと思ったのだが。そう上手くはいかなかった。
何の光も見えないまま風呂場を後にして、鏡の前の自分と向き合う。
スッピンに、春人用ではなく、エリとしての化粧を施した。
「…びっくりした、あんた…また女に近付いたな」
『その言い方じゃ、私が男みたい』
「いや、でもこれどうなってんの?…へぇ、結構変わるもんだな」
『そんな凝視するほど面白い?えっとね、男メイクっていうのがあって。
眉は下に付け足すように書いて、目と眉の距離を短くするの。あと鼻の横にシャドウを入れて高く見せたり。頬の下辺りにもシャドウを入れると、顔がしゅっと見えるよ。あとは上唇をコンシーラーで半分消したら』
「あー、ごめん。もういいかな。多分一生お世話になる事ないし」
大和があまりに私をじっと見つめるから、メイクに興味があると思ったのに。どうやらそれは違ったようだ。
必死に説明する私に、大和は苦笑いを返した。