第25章 その綺麗な顔が、どんなふうに歪むのか
「……は、はは。
なんだそりゃ?それで揺さぶりのつもりか?」
大和は再び立ち上がり、こちらへと歩み寄ってくる。そして、私を見下ろすようにして顔を近付けた。
「甘いんだよ。春人ちゃん」
至近距離で浴びせられた言葉は、確実な怒りを孕んでいた。
少しでも動けば、鼻先同士が触れ合ってしまいそう。しかしすぐに、大和から身を引いた。
「…次、俺の番だったよな」
『どうぞ。お手柔らかにお願いします』
「とりあえずさ、そのムカつく敬語やめてくれ。なんかだんだん、おちょくられてる気分になってきたんだわ」
『じゃあ脱ぎますね』
「おう……って、は!?今なんて!?
な、何がどうなってそうなった!?ちょっとお兄さんパニックなんだけど!?いや凄く大歓迎だけども!!」
『シークレットブーツ履いて、スーツ着て、ズラを被ってると、私は春人なんですよ』
話しながらも、私は靴をぽんぽんっと脱ぎ捨てて。ジャケットもカッターもさっさと脱いでしまう。さらにウィッグも外して、頭を左右に大きく振れば、サラサラと地毛が揺れ動く。
上は白いTシャツ。下はスーツのズボンという格好で、小さく息を吐いた私を、大和は見下ろした。
「…お、女だ」
『え?知ってたんでしょ』
「いや知ってたけど!こうやって改めて見ると、こう…変な感じだな…」
『あはは。変な二階堂さん』
「……今のその状態で “ 大和〜大好き〜 ” とか、言ってもらって良いですか」
『大和、大好き』
「………」
『二階堂さん?』
大和は、両手で顔を覆って、そっぽを向いてしまった。
「いや…なんていうか…思ってたより、威力が…っ」