第25章 その綺麗な顔が、どんなふうに歪むのか
確かに、環はすっかりと忘れてしまっている。私の事を、人前でえりりん と呼ぶなと約束したのに。
私も、それくらいではバレる訳がないと高を括っていた。男装までしているのだから大丈夫、という甘さがあったのかもしれない。
しかし…
今回 大和にバレてしまったのは、やはり彼の高い推察力があってこそだろう。
『たしかに タマちゃ…、四葉さんから周りへと広がってしまう可能性は、大いにあるでしょう。
でも私は…それならそれで、別にいいです』
「は…?なんでだよ!あんた、周りに知れたら困るから、ずっと隠して来たんだろ。
それに自分でも さっき言ってたじゃねえか!死活問題だって」
『そうですけど。
彼から漏れてしまうのなら、なんというか…諦めもつくというか。仕方ないというか。
言葉にするのは、難しいですね』
「…全くもって意味が分からねぇな。なんで…別にいいとか、仕方ないとか!なんでそんなにも簡単に言い切れるんだよ」
『こんなにも簡単に言い切っても良いくらい、彼に救って貰った事を 感謝しているから』
そう。これは、私の素直な気持ち。
『私には、彼に救われたという恩義がある。それこそ、私の秘密が漏れるくらいでは、お釣りが来るくらいです。
四葉さんからバレたなら、もうそれが運命だったんだと割り切ります』
「……はぁ。俺には、到底 理解出来ないわ」
立ち上がっていた大和が、まるで糸の切れた操り人形のように、どさりと椅子に崩れた。
『私と四葉さんは “ 心が繋がっている ” んですよ。
二階堂さんには、分からないでしょう。不思議で仕方ないでしょうね。
…未だにIDOLiSH7と、心で繋がれていない貴方には』
「……は?」
揺さぶりをかける。
彼が、この類の言葉に反応するのは分かっている。
『二階堂さんだって、IDOLiSH7のメンバーだというのに。貴方は…何を恐れているんですか?
どうして、IDOLiSH7になり切れないでいるんですか?
メンバーに、何を隠しているんです?
私に、話してみませんか?
貴方が胸を張って “ 自分はIDOLiSH7の1/7だ ” と言えない理由』