第25章 その綺麗な顔が、どんなふうに歪むのか
先に部屋に入った大和に続き、部屋へと足を踏み入れた。そして扉を閉める事で、自ら密室を作る。
「さて、飲み直しますか」
『二階堂さん』
「お、ラッキー。酎ハイ発見。あんた何飲む?」
冷蔵庫を物色し、レモン酎ハイを手にした大和。私の呼び掛けには答えず、ウキウキとプルタブを引いた。
『単刀直入に聞きますが。貴方は、何を どこまで知ってます?』
「あんたが女で、Lio だった。ってことくらいだな」
『そこまでご存知だとは。IDOLiSH7としての活動が特に忙しい時期でしょうに 私の事を調べる時間があるなんて。意外ですね』
「…へぇ。随分あっさり認めるんだな。意外だわ」
彼と話していると、まるでトランプゲームで争っている錯覚に陥る。
相手を挫くには、時に大胆に手札を切る必要がある。
“ 過去 ” のカードを捨てるのは痛いが、こちらにはまだ強い手札が残っている。しかし、それはまだ切らない。
“ 千葉志津雄 ” は、まさに切り札だから。
「俺なんかに知られちゃったら、ヤバイんじゃねえの?周りにベラベラ話しちゃうかもよ?俺 口軽いから」
『本当に口の軽い人は、自分で口が軽いなんて言いません。
それに、二階堂さんはそんな事しません。聡い人ですから。
“ 信じて ” ますよ。貴方のこと』
「……はは。
“ 信じてる ” そう言われちゃうと、裏切ってやりたくなるのって、なんでなんだろうな」
やはり、思った通りだ。
信頼、信用、この辺りのワードに 彼は強い反応を見せる。
何故だ?確証は持てないが、大和は…
信用するのも されるのも、敬遠してる気がする。
IDOLiSH7としての、二階堂大和。
千葉志津雄の隠し子の、二階堂大和。
この2つの立場が複雑に絡み合って、彼をそうさせているのだろうか。