第25章 その綺麗な顔が、どんなふうに歪むのか
食事中の所作は、人となりが露わになると思う。
お里が知れるとは よく言ったもので。箸の持ち方等を判断基準にして、人を見る人は少なくない。だから私も、それなりに気を付けているつもりだが…
大和は、綺麗だ。シルバーを持つ手先も。余裕を感じさせる咀嚼も。
アミューズやソルベに知らない素ぶりを示したのも、場を和ませる為の演技だったのでは?と思わせるほどに。
「………なわけ?」
『え…?』
「?聞いてなかったのか」
『すみません』
「べつにいいけど珍しいな。あんたがそんなふうに気を抜いてんの」
目の前に座る男の、食事シーンに見惚れていた…なんて言えるはずはなく。
誤魔化すようにして最後の肉を口へ運んだ。
「あんたって “ 絶対 ” とか “ 必ず ” って言葉、あんまり使わないんだって?
それってなんで?ポリシーか何かなわけ?」
『…そんな事が気になります?』
「まぁ、なんとなく。実際、今日も言ってなかっただろ?
絶対間に合うから。とか、言いそうなもんなのに」
『いえ、そんな無責任な事は言えませんよ。
私がバイクに乗ってる途中、心臓発作にならないとも限らないでしょう』
「ぶふっ」
『?
心臓発作が起これば、流石に衣装は届けられませんし…』
「いや、そうじゃなくて!ははっ。嘘だろ、十さんの言った台詞まんまかよ!ありえねぇ…はは。
あんたら、どんなけ互いの事 理解してんだよ…」
また、この感じだ。
顔は笑っているのに、心では泣いている。
信頼とか 理解し合うとか。そういうものが、彼の心を揺らす引き金になっている気がする。
大和は、IDOLiSH7のメンバーを信頼していないとでもいうのか?
IDOLiSH7は、大和を 本当の意味で理解していないとでもいうのか?
その辺りを知る為には、もう少し大和の本質を把握する必要があるようだ。