第25章 その綺麗な顔が、どんなふうに歪むのか
サヤエンドウの緑が美しいスープ。その表面を生クリームが平和に揺蕩っている。
「…分かった、分かったから。そう睨んでくれるなって。話すから。全部」
『お願いします。出来れば貴方には、嫌われたくないものですから』
「お、嬉しいこと言ってくれちゃって。お兄さん期待しちゃうかもよ」
大和の気が緩んだのを確認してから、スープにスプーンを沈める。
おそらく この様子なら、本心を話してくれるだろう。
「あー…初めは、ただ気に入らなかったんだよ。
あんたが、タマに悪影響を与えてるんじゃねえかって邪推した。
タマの奴、あんたに会ってから明らかに様子が変わったから。
いきなり夜、寮飛び出して行ったり。携帯依存症か、っつーぐらい携帯手放さなかったり」
『……あぁ』
正直、そこについては弁明の余地もない。
未成年をバーに連れて行ったのも事実であるし、今から考えれば もっとやり方があったとも思う。
まして彼は、アイドルなのだから。従って、私の方に非がある。
『…すみません、私の配慮が足りてませんでしたね』
「いや、それはもういいって。実はもう分かったんだわ。悪い影響なんかじゃなかったって。それどころか、むしろ逆だってな」
『逆?』
「ソウが言うには、タマは良い方向に変わっていってるらしい。
今まで、やりたい放題やってたタマが急に “ 俺はもっとすげぇアイドルになってやるー! ” とか言い出したんだと。
やる気出してくれんのは良いけど、もう熱い熱い」
目を瞑れば、ぼんやりと瞼の裏に浮かぶ。
まだ小さかった環が、仁王立ちしている。
そして、私に宣言した。
私よりも早く、凄いアイドルになったその暁には、私を迎えに来ると。
きっと 私との再会を果たしたことで、目標達成へ気合が入ったのだろう。
環は、今も昔も 純粋だ。そんな彼に、私は何度救われただろう。
「その顔」
『え?』
私が頭をもたげると、そこには
先程までの朗らかな大和は居なかった。