第24章 いい加減に白状すればいいのに
洗面台の蛇口を捻って、頭を突っ込んで水をザブザブ被ってしまいたい。そのまま顔をガシガシ洗ってしまえたら…
今のこの気持ちも、少しは晴れるのだろうか。
当然、そのような真似は出来るわけがない。
何故ならば、ウィッグ、男メイクがあるから。
仕方なく、ハンカチを濡らして額に当てた。それだけでも些かスッキリする。
『……はぁ。情け無過ぎる』
他人に向けられた言葉だというのに、勝手に過剰反応。挙句、大切なアイドルの手を強く払うというオマケ付きだ。
中でもショックだったのは…
『私…今の立ち位置に満足してないんだ…』
TRIGGERという素晴らしいアイドルが隣にいて、それをサポート出来るという幸せ。
こんな私が、未だに音楽業界に存在出来ているのは彼らのお陰だというのに。
これ以上、何を望むというのだろう。
『私は凄く、恵まれている。私は幸せ』
鏡を見てそう呟くと、気持ちが少しずつ落ち着いてくるのを感じる。まるで自己暗示のようではがあるが…
よし。良い調子だ。
『…うん。私は、幸せだ』
「全然そうは見えないけど」
『てっ、なん、で こんな場所にっ』
「は?まるでボクが女子トイレに踏み込んだみたいな言い方はやめてくれない?」
…そうであった。ここは、れっきとした男子トイレだ。
私はいつの間にか、無意識でトイレに駆け込んだとしても、きちんと男子トイレを選ぶ体になってしまったらしい。慣れとは恐ろしいものである。