第24章 いい加減に白状すればいいのに
『どうしてです?双子の弟が、やりたい事を見つけて 上を目指して頑張っている。家族なら、応援するべきでは?』
「まだ言ってなかったけど、陸には…絶対アイドルになれない理由がある」
天が、顔を上げてそう言った時。
何故か 私の心臓がギュっと掴まれたような感覚に陥った。
彼の言葉の先を、これ以上聞きたくない。
彼の悲憤に濡れた目を、もう見ていたくない。
「呼吸器系の病気を患っていているんだ。子供の頃に比べれば随分ましになったようだけど。
それでも、いつ何がきっかけで発作が起こるかは未知数」
頭が熱い。地面が揺れる。
いや、違う。大丈夫だ、落ち着け。
これらは、私に向けられた言葉ではない。
天は、弟の話をしているだけに過ぎないのだから。
「可哀想だけど…
アイドルとしては、大き過ぎる欠陥だ」
“ 欠陥 ”
その短い言葉が、胸の中心に突き刺さる。
「アイドルは、いつ爆発するかもしれない爆弾を抱えながら勤まるような、そんな甘い職業じゃない。
キミだって、そう思うでしょ」
分かっていた。
喉に欠陥を抱えた私は、アイドルを続けられるはずがないと。
だからこそ、自らの足で舞台から降りたのに。マイクを置いたのに。
まさか、私はまだ、どこかで夢を見たいのか?
喉に爆弾を抱えていても、トップアイドルになれるなんて。
「ちょっと、大丈夫?」
『…………』
「どうしたの?凄い汗を」
『触らないで!』
差し伸べられた手を、激しく払いのけてしまった。
やってしまってから、はっとして顔を上げて天を見る。
大きな瞳が、驚きに揺れていた。
その酷く傷付いたような表情を、これ以上見ていられなくて。私は堪らず逃げ出した。
『…ごめん なさい。少し、お手洗いに』
“ 欠陥品は、いらないよ ”
そう、言われた気がした。