第24章 いい加減に白状すればいいのに
私の心の乱れを、おいそれと見逃してくれる天ではなかった。
彼は私と共に、ぐちゃぐちゃになったテーブルの上を片してくれる。
天が、茶色くぐっしょりと濡れた冊子を持ち上げると、端からポタポタと雫が落ちた。その雫を眺めながら言う。
「まぁ、べつにキミが気付いていても気付いてなくても、話すつもりでいたから良いけど」
『…普通に、驚きました』
「ボクも。まさかキミがドジっ子属性だったなんて」
『ぐぅ…っ』
そう言われてしまうと、ぐうの音も出ない。いや。ぐうの音くらいは、出た。
「あまり自分の話をするのは得意じゃないけど…」
天はそう言いつつも、ぽつぽつと 自らの過去を話し始めた。
両親が昔 小さなショークラブを経営していたという生い立ち。どうして、陸と双子であるにも関わらず 名字が異なるのかという理由。現在は引き取られた家で 養子として暮らしている など。
そして、離れてしまった弟の事を 彼がどれほど気にかけ、心配していたのか…。
天が今まで、どれくらい陸の身を案じ続けていたか。今の彼の目を見れば。声を聞けば、簡単に察する事が出来た。
『天は、七瀬さんを 心から大切に想っているんですね。
ふ…、良かった。安心しました』
「安心?」
『はい。
私がIDOLiSH7を助けたいと言っても、貴方は 敵に塩を送るべきではないと言いましたから。
彼らのこと、良く思っていないのかと感じていたんです』
「良くは思ってないよ」
『え?』
「陸がアイドルになるなんて、今でも賛成してない。出来ることなら、無理矢理にでもやめさせてしまいたいくらいにね」
先ほどまで、家族を想う温かな瞳だったのに。今ではもう、その影もない。
冷徹で、強い拒絶の色が宿っている。