第24章 いい加減に白状すればいいのに
「ダンスや歌のレッスンも大切だけど、こういう知識も大事だと思って」
きっと、彼がそういった考えに至ったのは、ここ最近ではないはずだ。この本を持ち歩いているくらいだから。常々そう思っていたのではないだろうか。
「ファンとのコミュニケーションも然り、業界の人達とも もっと懇意になりたいからね。
キミだけに、甘えているわけにはいかないでしょ」
『業界の人間とのパイプを作るが私の仕事なのですから、そこは甘えてくれて良いんですよ?
まるで、今日の和泉さんのような事を言いますね』
「言っておくけど、和泉一織に触発されたわけじゃないからね?ボクだって以前から考えていたから!」
上を目指す為には何が必要か?と常々考えている。この天の姿勢は、尊敬に値すると日頃から感じていた。
それに、アイドル自身が こうした努力を重ねてくれている。周りに甘えるだけでなく、自らの力で上に登りたいと願っている。
こういう考え方が出来る彼が、素直に好きだと思った。
嬉しくて、意識せずとも口数も増えるというもの。
『分かってます。天は誰よりも努力家ですからね。そういうところ、尊敬していますよ』
「…なんか馬鹿にされてるみたいで、心から喜べないんだけど」
『それは残念です』
「うわ、すぐに諦めた」
『もっと褒めた方が良かったですか?』
「まぁ、キミが褒めたいのなら止めないけどね」
『天は、そんなにも格好良くて愛くるしい見た目でいながら歌唱力も素晴らしく。ダンスのセンスも抜群で、まさにTRIGGERのセンターに相応しいです。そんな貴方が誰より努力家ときている。もうこんなのは誰も敵わな』
「ごめん。やっぱり止める。ボクが悪かったから、もうやめて」
心なしか頬を赤らめて、口元を覆う天。そして、大きく顔を背けてしまった。
さっきの言葉は、嘘偽りのない私の気持ちなのだが。しかしそれを言ってしまうと、もっと天を困らせてしまうかもしれない。
褒めちぎるのは この辺にして、何か別の話題でも探してみようか。