第24章 いい加減に白状すればいいのに
事務所に帰り、パソコンにて日報をまとめる。今日あった出来事を詳細に書き残すのだ。これは、八乙女事務所に来る以前からの日課でもある。
ちなみに、この日報は社長も目を通す。なので、全部を馬鹿正直に書き記すわけにはいかない。
IDOLiSH7を助ける為に、TRIGGERのリハに立ち会わなかったなど…たとえ、この手がもげようとも書けるわけがない。
パソコンをシャットダウンする時に聞こえる、耳馴染みのある音に天が反応する。
「デスクワークは終わり?」
長ソファで読書をしていた彼は、手にしていた本をパタンと閉じた。
楽と龍之介は、明日の朝一で仕事が入っている為、一足先に姉鷺が社用車で送迎済みだ。
はい。と 返事をしながら、なんとなく天がテーブルに置いた本に視線をやる。
彼がどんな内容のものを読んでいたのか、気になったのだ。
本には水色のカバーが掛けてある。中を開かない限り、内容は知り得ない。
「これ、気になる?」
私の視線に気付いた天は、どうぞ。と言って、それを差し出した。
どうも。と 受け取り、すぐさま中身を確認する。
適当なページに指を差し入れて、遠慮がちに開いてみる。
「ふふ。キミに読める?」
『…読めなくは、ない。はずです』
並ぶ文字は全て、英語であった。
英語は、出来なくはない。しかし留学していた天と並べるレベルではない。
それでもなんとか、見知った単語から翻訳を試みてみる。
正確に訳せたわけではないが、どうやら この本は、他人との円滑なコミュニケーションを図る為に必要な事について書かれたものらしい。
見慣れない文字を凝視したせいで、目が乾いた。
目頭を指で圧迫しながら言う。
『……読み 終わったら…貸してくれます?』
「いいけど、ボクに見栄張る必要ある?」
哀れなものを見るような目で、天が呆れて呟いた。