第24章 いい加減に白状すればいいのに
いや、余計な事を考えるのは止そう。
私はただ、彼を利用して千葉志津雄へのコネクションを手に入れる。
自らの目的を再認識しながら、給湯室の扉を閉める。
「あ、春人くん いた!」
「おい春人!そんなところで何してるんだよ」
「…給湯室?」
私が後ろをついて来ていないのを不思議に思ったのだろう。彼らはわざわざ引き返して来た。
給湯室のドアノブに触れているの私を見て、天は怪訝そうな視線を向けてくる。
疲れもあったし、なんだかんだ考える事も多く、頭がいっぱいいっぱい。それでもやはり、何か言葉は返さなくてはならない。
『……無性に、この局の給湯室が、何口コンロか気になって』
「は?」
「…へ、へぇ。何口コンロだった?」
『一口でした』
「そ、そっかぁ。それじゃ うちの事務所と同じだ!良かったね」
『はい』
「何が!?」
「どうでも良いけど、言い訳雑過ぎない?」
給湯室で大和と会い、食事の約束を取り付けた。それをわざわざ話す必要はない。
もし知られれば、また根掘り葉掘りの質問責めに合う事は必至。出来るならば、それは避けたい。大和との約束の時間もあるし…
まぁべつに、絶対に秘密にしておきたい という訳ではないのだが。最悪、事後報告で良いだろう。
『さぁ、本当にそろそろ帰りましょう』
「いや、お前が急に姿くらましたから探しに来たんだろ」
「そうだよ。何そっちが、やれやれ感出してるの」
「あはは。まぁいいじゃない。春人くんが迷子になってなくて良かったよ」
なんとか、それ以上の言及を受ける事はなかった。
そして今度こそ私達は、八乙女事務所へと帰還を果たすのであった。