第24章 いい加減に白状すればいいのに
「はは、悪い悪い!ちょっとばかり悪ノリが過ぎちゃったか。
助けてもらった恩人に、こんな口きいちゃマズイよな」
『…はは、二階堂さんも人が悪いですね。驚いちゃったじゃないですか』
2人してヘラヘラと、心にもない笑みをこぼしてみる。腹の中では、相手が何を考えているのか真意の探り合いをしているくせに。
IDOLiSH7の危機を救ったのだ。彼からは感謝こそされ、憎まれる筋合いなど無いはずなのだが…
とにかく、彼の方からコンタクトを取って来たのは大きい。
たとえ本気で嫌われていたとしても、無関心よりはよっぽど良い。
どのような感情を向けられていたとて、何の関心も持たれていないよりはマシだ。
プラスでもマイナスでも、ベクトルがこちらを向いてさえいれば。気持ちをひっくり返すやり方など、いくらでもある。
「急なんだけどさ、今夜 飯とかど」
『行きましょう』
「うわぁ、食い気味。ちょっと引く」
『嬉しいお誘いですが、どうして私を?』
「うーん、そうだな。今日のお礼…?
ほら、あんた陸を助けようと必死に動いてくれただろ。どうしても目に見える形で、感謝の気持ちを伝えたいわけ。
…って建前とかは、どう?」
『どう?と、言われましても…。建前だと、こぼしてしまってますしね』
「はは。じゃあまあ、そういう事で。今夜20時、アールロイヤルの最上階レストラン待ち合わせな」
簡潔にそれだけ告げると、大和は一足先に給湯室を後にした。
私はというと、彼の “ ある言葉 ” が頭の中を回り続けていた。どうしても違和感が拭えず、その場に留まって考え続けた。
“ ほら、あんた陸を助けようと必死に動いてくれただろ。どうしても目に見える形で、感謝の気持ちを伝えたいわけ ”
『……』
( “ 陸を助けようと?” そこは普通、IDOLiSH7を助けようと。じゃない?)
もしかして彼は、本当の意味で、IDOLiSH7のメンバーになり得ていない?
もしも大和が、自分もIDOLiSH7の一員なのだという自覚があるのなら、そんな言葉は出てこないはずだ。
陸のピンチは、IDOLiSH7のピンチと同義なのだから。
もしや彼は…
かつての私のように、実は 1人きり。なのではないか?