第24章 いい加減に白状すればいいのに
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【衣装が到着する10分前】
『………』
まずい。
もうTRIGGERのリハが終わり、そろそろIDOLiSH7のリハが始まってしまう時刻だ。
どれだけ飛ばしても、あと10分はどうしても必要。
とにかく焦っても時間は待ってくれない。状況を確認する為に、マネージャーへ電話をかけてみる。
すると、ワンコールと待たない内に電話は繋がった。
『!もしも』
《もしもし!!えりりん!?俺!!俺俺!》
『タ、タマちゃん?』
イヤホンから、耳を通して脳にまで響き渡る大声。そしてオレオレ詐偽ばりに、俺 を連呼しているのは、間違いなく環である。
どうして小鳥遊紡の携帯に彼が出たのか。私がそれを問う前に、環の方から説明をくれる。が…
《あ、えっと!なんで俺が電話持ってんのかってーと、マネージャーは、TRIGGERのリハ見てて、んで衣装届いたら、俺らの誰かがTRIGGERんとこまで合図を出すんだって!
っていうかさ!すげぇのTRIGGER!リハーサルが全然終わんなくて、ずっと歌ってて踊ってて》
『うん、よーく分かりました。とりあえず、和泉一織君に電話代わりましょうか。良い子だから』
《もしもし、お電話代わりました。和泉です》
落ち着いた声にほっと胸を撫で下ろした。しかし電話口の向こうから、環を慰めているのであろう壮五の声が聞こえてくる。
きっと環は、私が一織を会話相手に選んだ事で落ち込んでしまったのだろう。
しかし、環へのフォローは後回しだ。
『和泉さん、今の状況は?』
《マネージャーは私達に携帯を預けて、貴方の代わりにTRIGGERのリハーサルに付き合っています》
なるほど。責任感の強い彼女らしい。
あの3人なら、誰かが付き添ってなどいなくても問題ないと思うが。それで彼女の気持ちが少しでも楽になるなら、それも良いと思う。