第3章 今の寝言は、特別に…聞かなかった事にしてあげる
「ボクの時間は、ボクの物だ」
『……もし九条さんが、本番まで休む事なく練習を続けるというのなら…、私は おりますよ」
私と天は、しばらく無言で睨み合う。
「社長に確認した。キミと会社が取り交わした契約は、絶対らしいね。
キミはTRIGGERのプロデューサーからは逃げられない」
『…いつの間にか、随分と好かれたものですね』
「別にキミを好きなわけじゃない。ただブラホワが終わるまでは、絶対にキミを…逃がさない」
そんなギラついた瞳で、逃がさない。などと言われてしまうとトキめいてしまうではないか。
出来るならば、もっと違うシチュエーションで言われたかったものだ。
『…九条さん、貴方がそこまで休みを嫌がる理由は何ですか』
「決まってるでしょ。まだ完璧にはほど遠い仕上がりだからだよ」
『体を休めることなく酷使して、効率の下がった練習を続けて 何か意味があると?』
「効率が下がって、体を壊したとしても、完璧じゃない物をファンに見せるよりはマシだ!」
『自分で分かってるじゃないですか。このままじゃ貴方は絶対に体を壊しますよ』
私と天のやりとりを、ずっと静観していた龍之介が、ついに我慢出来ずに口を開く。
「あ、あのさ2人とも…ちょっと落ち着いて?落ち着いてゆっくり話せば分かり合」
「落ち着いてる!」
『落ち着いてます!』
私と天の叫び声が、見事に綺麗なハーモニーを奏でた。
「う、うぅ…凄く怒鳴られた…」こわい
「災難だったな。あれのどこが落ち着いてるっつーんだっての。
2人とも…ヒートアップしすぎだぜ」