第3章 今の寝言は、特別に…聞かなかった事にしてあげる
勿論の事、ブラホワまでの1ヶ月を 全てレッスンに費やせる訳ではない。
彼らは、売り出し中のアイドル。最近になってやっと今までの努力が実り。メディアへの露出が増えてきたところ。
要は、頑張りどころ。なのだ。
ブラホワ優勝を狙っているからといって、仕事を削り過ぎるわけにはいかない。
仕事をこなす合間に、レッスンを詰め込む。そんな生活が続いて、2週間が経っていた。
強引で過剰なスケジュール。レッスンの進捗は…芳しくない。
みんな言葉にはしないものの、確実に焦っている。ピリピリとした空気感が、それを物語っていた。
このままでは、メンバー同士がぶつかるのも時間の問題か。そう思っていたら…
案の定、それはやってきた。誰と誰が衝突したのかというと
天と…
私だ。
「は?休み?」
『はい。明日はオフです。皆さん体を休めて下さい』
「おい待てよ。今の俺達にそんな余裕無いだろ」
「楽の言う通りだ。せっかく明日は仕事が休みで、1日レッスンに充てられるのに…」
ある程度、反発がある事は予想していた。しかし。
2週間に一度は、絶対に休息を与える。これは私の曲げられないルールだ。
折れる気など毛頭ない。
『労働基準法ご存知ですか?どれだけ売れっ子のアイドルだろうと、例外はありませんよ』
「…自由な時間に、何をしても俺達の自由だろうが」
『そんなのは屁理屈です。とにかく、明日は 仕事も歌もダンスも禁止です』
「頑な、だね。ふぅ、これは従うしかないかな」
「…っチ。それでなくても時間が足りねぇのに」
何を言われても構わない。憎まれても。嫌われても。
でも、休息を取らない事だけは絶対に許さない。