第23章 素敵な衣装ですね
ありがたいことに 行き道よりも若干、交通量が少なくなった気がする。それでも、このまま行けば間に合うかどうかギリギリといったところか。
あまり気は進まないが、車と車の間を縫うようにして進む。
いくら車が停車中とは言え、相手をヒヤリとさせてしまうかもしれないこの行為は、出来るならしたくないが。今はやむを得ない。
当然、交通ルール上は違反にあたる。だから、警察のお世話にならないよう、上手に掻い潜らねばならない。
その為に大切なのは、周りに注意を配る事。
パトカーが近くにいないか、目を凝らすのは勿論のこと。それよりも気を付けないといけないのは…
『…!あれは』
私がいる位置の、数台前の車に目が行った。
車種はクラウン。カラーはシルバー。そしてバックミラーの数が2つ。
あの車こそ、交通ルールを掻い潜る上で最も気をつけるべき対象だ。
私はゆっくりと減速。
すると、その横を赤いスポーツカーが抜き去った。明らかなスピード超過だ。
『……あーあ』
私が呟いたのと同時。例のクラウン車が、突如としてけたたましいサイレンを鳴らした。そして、車体上側にはいつのまにかパトランプが乗せられている。
そして、さきほどのスポーツカーを道路脇へと誘導。
そう。交通ルールを掻い潜る上で最も気を配らなければならないのは “ 覆面パトカー ” だ。
彼らは本来の姿を隠し、違反者を影からずっと探しているのだ。その偽りの姿にまんまと騙されると、あのスポーツカー同様、お金と時間を持っていかれる。
私は心の中で、ご愁傷様。と呟いてから、法定速度で横を通り過ぎた。