第23章 素敵な衣装ですね
その後は大きなトラブルに見舞われる事もなく、軽快に着実に目的地への距離を縮めていた。
この分なら、なんとかギリギリ間に合うか。そう安堵しかけた時。
背後から迫る、嫌な気配を察知した。
サイドミラーを調節して、後ろを確認する。
『……最悪』
ミラーに映ったのは、白バイの姿だった。
いつもの愛バイクであれば、何も後ろめたい事などない。堂々と走っているだけで、白バイは問題なく通り過ぎていくだろう。
しかし今、私が跨っているこれは…バリバリの改造バイクである。
100%ではないが、止められて注意を受ける可能性がある。そうなれば、全ては終わりだ。職質だなんだと時間を食えば、衣装は確実に間に合わない。
そうなる前に…あの白バイをやり過ごすしかない。
私は、大通りを出て横道へ入る。
そして出来る限り細道へ 細道へと、身を隠すように左折右折を繰り返す。
やはり白バイは、わざわざサイレンを鳴らしてまで私を追う事はしなかった。
しかし…
『…予定より、到着が遅れる』
どう計算し直しても、この場所から局へ戻るには30分はかかる。
現場では、そろそろTRIGGERのリハが始まる時間だ。従って、私に残された猶予は20分ほどしかない。
心臓が嫌な高鳴り方をし、暑くもないのに背中には汗が伝った。