第23章 素敵な衣装ですね
「あの…この度は、私に不手際があったせいで ご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ありません。
こんな事になってしまったのは、全て私の不注意のせいなんです…」
エレベーター内。空調の音だけが小さく響いていた中、彼女が言った。
言わずもがな、責任を感じているのだろう。
本来、衣装の確認は早めに済ませておくべきだから。私がそうしたように。
今回のように、自分の事務所から持ち入れではなく、業者からの直接搬入であれば尚の事。
しかしそれを今、一番痛感しているのは彼女。最も責任を感じているのは彼女自身だろう。
だが、その気持ちさえあれば、次からは同じ失敗はしないはずだ。
ならば、私から言う事は何もない。
『いえ、全然。それより、こちらこそすみませんでした。
さっきのADさん、私達の関係を勘繰るような事を言っていたでしょう?それで、小鳥遊さんには嫌な思いをさせてしまったかな と思いまして…』
彼女に気を遣わせないよう、すぐに話題を変えてみる。
すると紡は、小さな両手の平をこちらに向けて、ぶんぶんと振って言う。
「そ、そんな!そんな事は思ってないですよ!」
『そうですか?その割にはあの時、必死になって否定していたような…
そんなに私の彼女と間違えられたのが不快だったのかと、ちょっとヘコみました』
「あれは、その…!私なんかが中崎さんの、こ 恋人だなんて、おこがましいと思って!きちんと誤解を解かなくてはと思った次第で…
って…なんだか、自分でも何を言ってるのか分からなくてなってきました!」
ぐるぐると目を回しながら、必死で説明する彼女。小さくて一生懸命で…
初対面の時も感じたが、まるで兎か何かの小動物のよう。
そして、初対面の時には分からなかったが、今だからこそ分かる事もある。
彼女はきっと…
優しくて、良い子なのだろう。
『貴女は、良い子ですね』
「え…」
ふわふわの頭に、そっと手を置く。
左、右にと、ゆっくりとその手を移動させると、見る見るうちに紡の顔色が赤いものへと変わっていった。