第23章 素敵な衣装ですね
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「え?バイク?いいっスよー。好きなだけ乗り回しちゃってもらって」
『ありがとう、助かります。今日は車で来たんですけど、急遽必要になってしまって。この恩は、いつか必ず返します』
パンク風味なADの彼が、快く鍵を渡してくれる。その時、隣に立つ紡に チラリと視線を向けて言った。
「…春人くんも隅に置けないっスねぇ。お仕事ほったらかしてデート?
いいねぇ!オレそういうの嫌いじゃないスよ」
「……えっ、え! あのっ、私達は、そういう関係じゃ ないですよ!?」
ニヤニヤとした視線が自分に向けられているのだと、何拍か遅れて気付いた様子の彼女。
『私達は付き合ってはいませんが、君のようなバイク野郎には渡せないかな』はは
「そのバイク野郎にバイク借りに来たのは誰スか!思わず貸すの嫌になっちゃいそう」はは
『困ります ごめんなさい』
「すぐ謝った!!
冗談スよ。それに、春人くんに恩売る機会なんか滅多にないし?これはもう、合コンに2回は付き合って貰わないと」
そう来たか。
実は 彼からは今まで何度も、そういう席の誘いを受けていたが断り続けてきたのだ。
しかし、彼の言う通りこの恩はデカイ。合コンくらいなら何度か付き合っても構わないと思えるほどに。
『2回と言わず、君が理想の女性に出逢えるまで付き合いますよ』
「マジっスか!?やりぃ!春人くんが居れば勝ち確!楽しみにしてるから!」
嬉しそうに飛び跳ねる彼をおいて、私達はその場を後にした。
予想以上に話し込んでしまった。時間はカツカツだというのに。ここからはシビアに時間を切り詰めていかなくては。
リハーサルの順番を変えてもらう手はずは、もう既に整っている。
予想した通り、私が TRIGGERとIDOLiSH7の出順を逆にしたいと申し出たところで、嫌な顔をする者は誰一人いなかった。
後は、私が道中で衣装を業者から受け取り、IDOLiSH7のリハまでにそれをここまで運びさえ出来れば…