第23章 素敵な衣装ですね
「えりりんが間に合うっつったら、ぜってー間に合うんだっつの!
だから りっくんは黙って、そのトランクスみてーなズボン脱いで待ってりゃいんだって」
「ちょ!環やめて!強引に脱がせようとしないで!」
ここに衣装を持って来るまでには、確実に一時間以上はかかる。その間、ずっと陸にパンツ姿でいろと言うのか…環は。
なかなかの鬼である。
陸を追いかけ回す環を見て、つい頬が緩みそうになるが。今は癒されている場合ではない。
今からすぐに楽屋に戻って、TRIGGERにリハの順番を入れ替える事を説明。そしてその後は、現場監督に話をつけて、それからADの男の子にバイクを借りて…
ああ それから、さきほど紡の携帯ディスプレイを見て確認した、仕立て屋の携帯番号を 自分の携帯へ登録しなければ。
そして早めに連絡を取ろう。きっと今頃、タクシーの中で携帯を握りしめ、私からの連絡を待っているだろうから。
これからやるべき事をリストにして、脳内でまとめていると。この部屋にTRIGGERの面々が現れた。
「お前!また勝手に色々と決めやがって!」
楽は入室するなり、私の額を人差し指で2度3度 と突っついた。
どうやら廊下でリハ入れ替えの話を聞いていたらしい。
私のおでこには、結構な衝撃が響いて割と痛かったが。彼らに説明する手間が省けた事への嬉しさが勝った。
早速 脳内のやるべき事リストから、最初の項目を消去した。
『と、いう事なので後はお願いします』
「こいつ…!俺らへの説明は省きやがった!」
「ま、まぁまぁ。実際、廊下で大体聞いたから大丈夫だろう?落ち着いて楽」
「龍の言う通り。早く行って」
天は、微塵の揺らぎもない瞳をこちらに向けて告げた。
「TRIGGERのプロデューサーがわざわざ首突っ込んだんだ。
“ 間に合いませんでした ” は、許さないから」
力のこもった眼差しなのに、口角は少しだけ上がっているように見えるのは、私の気のせいではないだろう。
『善処します』