第23章 素敵な衣装ですね
「…僕はアイドルだけど、正直 この人に勝てる気しないのが不思議だな…」
「OH!ソウゴ!謙遜は良くないです!自信持ってください!アナタの方が、イケてるメンズですよ?
もちろんワタシも、彼には負けていないくらいの イケてるメンズですよね?」キラン
「顔だけなら…凄く良い勝負してると思うよ。大丈夫…」
「WHAT!?一体それのどこが大丈夫なのですか!?」
メラメラとライバル心を燃やすナギの気配を感じつつも、私は話を進める。
相変わらず 不安気な顔をしているマネージャー。まだ動転しているのかもしれない。しかし、そろそろ落ち着いてもらわなければ…
『時間が無いので、必要最低限の説明で済ませますよ。
さきほど貴女が言ったように、普通でいけばリハまでに衣装を持ってくるのは無理です。
なので、リハの順番を変えましょう』
「順番…!で、でも、まだデビューしたばかりの新人が、順番を変えてくれだなんてお願いは…」
『周りへ与える心象は良くないでしょうね。だから、リハの順番を変えて欲しいと言い出すのは…
IDOLiSH7ではなく “ TRIGGER ” と、いう事にします。
リハと本番の間に、インタビュー取材を受けていたのを私が忘れていた。だからIDOLiSH7と順番を代わってもらったのだ。そう私からスタッフに進言します』
リハーサルの順序は、IDOLiSH7が3番目。TRIGGERが4番目である。これを入れ替えるのだ。
大体、いつもTRIGGERがリハに使う時間は20分ほど。つまりは、順序を入れ替える事で20分は稼げる。
「そ、それなら本当に間に合うかもしれません!
ですが…プロデューサーさんやTRIGGERの皆さんに、そこまでご迷惑をかけて良いのでしょうか?
それこそ、中崎さんの心象が悪くなってしまうのでは…」
『迷惑なんて思いません。困った時はお互い様ですし。それに…
心象が、悪くなる?私の?
まさか。これくらいの事で悪評を買うような立ち回りを、普段 私がしているとでも?』
自分でも気が付かない内に、笑っていたのかもしれない。一織が、呆れたように呟いた。
「なるほど。こういう時の為なんですね。今まで貴方が “ 愛される努力 ” を積み重ねて来たのは」