第23章 素敵な衣装ですね
「UMM…アナタ、何をするつもりですか」
『小鳥遊さん。今から私が言う事、よく聞いて下さい』
「OH…たしかにこれは、かなりハイスペックなスルースキルです…。スルーという名の無視です…」
私は、ナギに背中を向けて説明を始める。
申し訳ない気持ちはあるが、今は一秒でも惜しい。
『私が責任を持って、衣装を取りに行ってきます。現状ですが、業者の方は今、タクシーでこちらへ向かっているところです。
ここ(テレビ局)と仕立て屋の中間地点辺りで、衣装を受け取り、そこからは 私がここまで衣装を運びます』
「えっ?でも…
プロデューサーさんが途中で衣装を受け取って ここまで持って来てくれるのも、仕立て屋さんがここまで衣装を持って来てくれるのも、どっちも かかる時間は変わらないんじゃ…」
陸が首をひねる。
女性顔負けの綺麗な生足が、目に毒だ。
そんな おみ足を凝視したい気持ちをぐっと堪え、私は彼の疑問に答えようとした。
しかし、それよりも先に大和が思い出したように言う。
「そうだ!あんたの足って、たしかバイク…」
『そういう事です』
車とバイクでは、移動時間に大きな差がある。特に渋滞が多々発生するような場所では尚更だ。
今日は残念ながら、ここまでは車で来たのでマイバイクではないが。貸してくれる知り合いなら、局内にも数人いる。免許さえあれば何も問題はない。
誰にバイクを借りようか、頭の中で候補の人間を考えていると。心配顔のマネージャーが口を開く。
その横には、一織が苦心の表情を浮かべていた。
「で、ですがっ、それで本当に間に合うのでしょうか。
リハーサルまでに残された時間は約55分ほどですっ。いくら小回りの効くバイク移動とはいえ、厳しいのではないですか?
やっぱり、リハは衣装なしで と考えておいた方が無難じゃないでしょうか…」
「ええ。私もそう思います。今回は、本番の撮りまでに衣装が間に合えば それで御の字だと思」
私は、一織の唇を人差し指で 軽く押さえた。
彼の言いたい事は、最後まで聞かずとも分かったからだ。
「なっ、な…なんっ、」
『大丈夫です。そこもちゃんと、考えていますから。
無理だ駄目だと考えず、ここは私を信じて委ねて下さい』