第23章 素敵な衣装ですね
『衣装は、小鳥遊事務所ではなく 仕立て屋にあるのですか?』
「お、清々しいほどの無視だな。まぁいいけど。
そいでもって、お前さんの言う通り。
今回使う衣装は、今日が初お披露目だったからな。ここへ直接 納品してもらう約束になってたわけ。
もし うちから搬入してたんなら、長ズボンと半ズボン間違えるような間抜けな事態にはなってねえよ」
大和がチラリと視線を向けた場所には、白く大きな箱が山積みになっていた。
あの中に、彼らの衣装が入っているのだろう。
箱に描かれた、会社のロゴマーク。あれには見覚えがある。たしかこの会社、ここから車で一時間半くらいの場所に位置していたはずだ。
『……これは…運が良い』
「おかしいな。お兄さんの聞き間違いか?こんな状況で、運がいいわけ」
大和の言葉を待たずして、私は6人に囲まれた紡の方へと歩み寄る。そこでようやく、全員が私の存在に気が付いた。
こちらに集まる視線は とりあえず気にしないようにして。私は紡の携帯電話を、ひょい と持ち上げ、自分の耳に当てた。
通話中の携帯を取り上げられて、驚きを隠せないマネージャー。しかし私はすぐに電話口の向こうにいる人物に語りかける。
『もしもし。今すぐに 衣装を持って、こちらに向けて出立してください。ただし、社用車ではなくタクシーを使って。
それともう1つ。
15分ほど後に知らない番号から、貴方の携帯に着信が入ります。それは私の番号なので、必ず出て下さい。
…ええ、はい。大丈夫ですよ。落ち着いて、私の言うことに従ってもらえれば、大事にはなりません。では、後ほど』
電話口の相手は、かなり焦っていた。しかし 落ち着いて行動してもらわねば、私の目論見通りにいかなくなってしまう。
私の頭の中では、最も正解に近い形が もうほぼほぼ組み上がっているのだ。
「え…?ちょっ、
なぁ おっさん!この非常時になんで他事務所の人が!?っていうか、この人いつからここにいた!?」
「さぁ?さっき聞いたら無視されちゃったから、俺だって知らねえんだわ」この人のスルースキル半端ない