第23章 素敵な衣装ですね
《 IDOLiSH7 様 》
とのネームプレートを確認してから、ドアをノックをする。しかし待てども待てども返事がない。
きっとこの後すぐ、一分一秒を争う事態へと発展するだろうと私は予想している。だから こんなところで無駄に時間を浪費するわけにはいかない。
中から返事は貰えていないが、私は入室を決めた。
ドアを開けると、すぐに人影が確認出来る。
そして、マネージャーの切羽詰まった声が聞こえてきた。
携帯で通話をしている彼女を取り囲むようにして、不安げな表情で見守っているメンバー達。
よほど真剣に聞き入っているのか、誰も私の入室に気付いてはいない。
私も彼らに倣うように、聞き耳を立てながらマネージャーにそっと近付いた。
「はい…、ですから…!謝罪ならまた後ほど伺いますから!とにかく、今は衣装が必要なんです!
うちの七瀬がそれを着るのは、一時間後…!一時間後のリハーサルまでに、それが手元にないと困るんです!」
電話は、衣装を用意した会社に繋がっているのだろう。そして会話内容から察するに、どうやらミスはあちら側にあるようだ。
彼女の口ぶりから、私の中にひとつの疑問が浮かんだ。
“ それが、手元にないと困る ”
当然、それ とは衣装のことだ。
『………』
(衣装は 小鳥遊事務所ではなく、現在 仕立て屋にある?)
「うわっ びっ くりした…!あんたいつからここにいた!?」
一番最初に私に気が付いたのは、大和だった。よほど驚いたのだろう。先ほどまで私に使っていたはずの丁寧語が、どこかへ飛んでいってしまっている。
他事務所とはいえ、アイドルに敬語を使われるのは落ち着かなかったので、むしろ好都合だ。